Let's Travel!
この数年なんとなく落ち着かず閉塞感のある中、お出かけしたくないですか?旅に出よう!!!!とは言っても、中々難しいですよね。じゃ、作品を通して旅に出ませんか?
陸に打ち上げられた船を見つけたり。エジンバラの水路沿いの道を歩いてみたり。ブルゴーニュの村を車窓から眺めたり。森の奥深くにある大木を見つけたり。美術館の中で旅行気分を味わいませんか?
見たままをそのまま忠実に描くことを基本にした絵画作品。しかし、作家の数だけ描き方があります。瞬時にデジタル写真が撮れる時代にあって、写実画家はキャンバスに一筆一筆、絵の具を重ねていきます。そこには現実以上の感動をよぶ何かが込められています。作家が感動したものを描くことが基本であり、長い時間をかけて、ときには1年をかけて1枚の作品を仕上げる。それは人間にしかできない、人間の存在とは何かをつきつめていくことにも通じます。写真とは違う表現であり、ありのままを描くことを基本に、それ以上の存在を描く。それは真摯な思いを込めた作品です。写実絵画は、何の背景知識がなくても入っていける絵画作品なのです。
写実絵画とは
ホキ美術館は世界でもまれな写実絵画専門美術館として、2010年に千葉市緑区に開館しました。そのコレクションは、保木将夫が収集した写実絵画作品、約500点を収蔵。千葉市最大の公園である緑ゆたかな「昭和の森」に面した、地上1階、地下2階の三層構造× 計500メートルにわたる展示スペース。回廊型のギャラリーでは、森本草介をはじめ、野田弘志、中山忠彦など、約60名の現代作家による写実の名品約120点を常時鑑賞することができます。ギャラリー1は鉄板構造によって空中に浮かせ、先端の窓からは森が見渡せます。不定期で、画家や専門家を招いてのギャラリートークを開催、過去にはクラシックギター、弦楽四重奏、ピアノとチェロの二重奏などのコンサートも開催されました。
ホキ美術館とは
青木敏郎、石川和男、石黒賢一郎、大畑稔浩、小尾修、五味文彦、島村信之、曽根茂、野田弘志、羽田裕、原 雅幸、塩谷亮、中西優多朗、藤原秀一、森本草介(五十音順)
出展作家
企画展アーカイヴ
世界の名画には人物画が多いなか、日本の名画には風景画が多いように思います。日本には、はっきりとわかる四季があり、それが故だと思います。四季の移り変わりは、時の流れそのものです。それは、諸行無常を感じさせるには十分です。写実絵画は「存在」を描くといわれていますが、存在は常に時間を内包して移り変わっていくものです。霞ヶ浦の水面と空、二次元で時が止まった絵ではなく、時を含んだ絵画作品。
大畑稔浩「仰光 − 霞ヶ浦」
大畑稔浩:昭和35年島根県生まれ。東京藝術大学大学院修了。2007度白日展にて内閣総理大臣賞受賞。緻密な描写力で現代リアリズムを牽引する俊英画家。
"昼間だと景色がほぼ見えるけれど、夜の風景だと見えるところと見えないところがあるじゃないですか。そういう時に見えないから見えないものとして描くのか、見えてはないけれども実際に空間としてあるものとして描くのか、みたいな。そういうところをこの作品では考えていました" 京都の鴨川の夜を描き、繊細に波間を紡ぎ出す作者の感度の鋭さを感じる、ホキ美術館初展示作品。
アメリカArt Renewal Centerが主催する15th International ARC Salon Exhibition、サザビーズ・ニューヨーク出品。
中西優多朗「夜の鴨川」
中西優多朗:2000年京都府生まれ。16歳のときに応募した第二回ホキ美術館大賞に最年少で入選、その後美大へ進み、三年後の第三回ホキ美術館大賞受賞。日本的な精神性や美の価値観を写実絵画という客観的な表現手法を通して探究する。
30代の終わり頃、海外に写生に出掛け、偶然行き着いたところが南仏プロバンスだった。フランスやイギリス、ドイツから避暑にやってくる人が多いというこの小さな町で、農家に下宿し、戸外で近くの風景を多く描いた。ディテールは描き込まず、絵具をしっかりのせてトーンを豊かにしており、画家も気に入っているという1枚。
青木敏郎「プロバンスの農家」
青木敏郎:1947年京都市生まれ。リアリズムの作風と、ヨーロッパの古典絵画の技法を現地での研究をもとに追求し続ける画家。
なだらかな丘、赤い屋根、葡萄畑、草原など、いつかどこかで見たような、懐かしいような、ブルゴーニュ地方の風景がイメージできる。ブルゴーニュといえば、まず浮かぶのがヴェズレー(世界遺産、巡礼の出発地点)。丘の上の中世そのままの小さな町は美しく、愛らしく魅力的だ。何度も訪れているが、行く度に新しい発見があり、興味が尽きない。ヴェズレーの丘の広がりがこの絵の構図を極端に横長にさせた。そのうちにまた行きたいという憧れにも似た気持ちが、日々私の心を楽しくさせる。